定年退職前にやるべき退職金シミュレーション5ステップ
定年退職が近づくと、退職金の使い道ばかり考えてしまいがちです。しかし、最も重要なのは「どう受け取るか」です。受取方法によって手取り額に100万円〜300万円の差が出ることも珍しくありません。この記事では、退職前にやるべきシミュレーションを5つのステップに分けて解説します。
ステップ1:退職金の正確な金額を確認する
まず、自分の退職金がいくらになるのかを正確に把握します。多くの企業では退職金規定や退職金シミュレーションシステムがあり、人事部に問い合わせれば概算額を教えてもらえます。確認すべきポイントは以下の通りです。
- 基本退職金の金額(確定給付型の場合)
- 企業型DCの残高(確定拠出年金がある場合)
- 退職金の受取方法の選択肢(一括・年金・併用)
- 年金受取の場合の予定利率と期間
- 受取方法の選択期限と変更可否
退職金制度は会社ごとに異なります。確定給付型(DB)か確定拠出型(DC)かによって、受取方法の選択肢も税務上の扱いも変わります。企業型DCの場合、退職後にiDeCoに移管するという選択肢もあります。自分の会社の制度を正確に理解することが第一歩です。
ステップ2:退職所得控除額を計算する
退職所得控除は、退職金にかかる税金を大幅に減らす仕組みです。自分の勤続年数に基づいて正確に計算しましょう。計算式は単純です。勤続年数が20年以下の場合は「40万円 × 勤続年数」(最低80万円)。20年超の場合は「800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)」。端数は1年未満でも1年に切り上げます。
例えば、大学卒業後38年間勤めた場合の控除額は「800万円 + 70万円 × 18年 = 2,060万円」です。退職金がこの金額以下なら、一括受取で税金はゼロ。退職金額と控除額の関係が、受取方法を決める最大の判断材料になります。
ステップ3:iDeCo残高と受取タイミングを確認する
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合、退職金との関係を必ず確認してください。2026年の10年ルール改正により、iDeCoと退職金を両方一時金で受け取る場合、受取間隔が10年以内だと退職所得控除が調整されます。
確認すべきポイントは、iDeCoの現在の残高と60歳時点の見込み額、iDeCoの加入年数(控除額の計算に使用)、退職金との受取間隔を10年以上空けられるかどうか、年金受取にした場合の税負担の変化です。多くの場合、退職金を先に一時金で受け取り、iDeCoは70歳以降に受け取るか年金受取にするのが最適ですが、個々の条件によって異なります。
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無料でシミュレーションするステップ4:税金と社会保険料を試算する
受取方法ごとの税金を正確に計算します。一括受取の場合は比較的シンプルで、退職所得控除後の金額の2分の1に対して所得税・住民税がかかります。年金受取の場合は、公的年金や他の所得との合算で毎年の税額が変わるため計算が複雑になります。
見落としがちなのが社会保険料への影響です。退職後に国民健康保険に加入する場合、年金受取による所得増加は保険料に直結します。また、年金受取額が一定以上になると、公的年金の受給額にも影響する場合があります(在職老齢年金の調整)。税金だけでなく、社会保険料を含めた「実質手取り額」で比較することが重要です。
ステップ5:最適な受取プランを決定する
ステップ1〜4の情報を総合し、最適な受取プランを決定します。判断の基本方針は以下の通りです。退職金が退職所得控除の範囲内なら一括受取がほぼ確実に有利。控除を超える場合は、超過分を年金受取にする併用方式を検討。iDeCoは退職金との間隔を10年以上空けるか、年金受取を選択。
最終的な判断では、手取り額だけでなく退職後のキャッシュフロー(毎月の生活費が賄えるか)も考慮してください。一括で受け取って自分で運用する自信がない場合は、多少税負担が増えても年金受取のほうが生活設計上は安全な場合もあります。ただし、その「安心料」がいくらになるかは把握しておくべきです。
シミュレーションはいつから始めるべき?
結論から言えば、退職の1〜2年前には完了させるべきです。特にiDeCoの受取タイミングを退職前に調整する場合(例えば早期にiDeCoを受け取る)は、さらに前もった計画が必要です。退職直前では選択肢が限られてしまうため、50歳を過ぎたら一度はシミュレーションを行うことをおすすめします。
まとめ:5ステップで後悔しない退職金の受取りを
退職金の受取方法は人生で一度きりの判断です。退職金額の確認、退職所得控除の計算、iDeCoとの調整、税金・社会保険料の試算、最適プランの決定という5つのステップを踏むことで、数十万円から数百万円の手取り額の差を最適化できます。計算が複雑で自分では難しいと感じる方は、まず無料のシミュレーターで概算を確認し、それを基に税理士やファイナンシャルプランナーに相談するのが効率的です。
※本記事は一般的な税制に基づく情報提供を目的としており、税務アドバイスを提供するものではありません。個別の事情により税額は変動します。正確な税額の計算については、税理士等の専門家にご相談ください。